スペシャル連載コラム Worx Tark Column by Yuichi Nakamura
Vol.01

自動車盗難とセキュリティの戦い

2017/07/07 update

セキュリティ意識の低下

自分がWORXを立ち上げた当時、GT-Rが第二世代の頃は盗難が全盛でした。ランクルやインプレッサもかなりの台数がやられました。車種によっては車両保険に入れないためセキュリティで自衛するしかなかった。当然みなさんのセキュリティ意識は高かったのですが、その後イモビライザーが採用されるようになって安心してしまったのか、最近になって皆さんの危機意識が下がったのが残念です。

セキュリティ意識の低下

確かに一時期より盗難件数は減ったのですが、すぐにイモビカッター(イモビライザーを無効にする手に収まる小さな機器)が流通し、イモビライザー装備の車種も簡単に乗り逃げされるようになりました。さらにリモコン操作をせずともロックが解除できるスマートキーがスタンダードになるや、すぐにリレーアタックが出来ました。キー溝がないから複製されない、ピッキングされないなんて安心出来た時期は「ほんの一瞬」で盗難側の「対応」がすぐになされています。

スマートキーも複製されるので安心できない。

話題の「リレーアタック」はスマートキーがリモコン操作をしなくていい代わりに微弱な電波を常に出していることを逆手に取り、その電波を増幅させ中継器を経て車両のロックを解除&エンジン始動してしまうもの。文字通り音もなく乗り逃げされてしまうのです。

リレーアタックのモノ自体は中国製で20ドルほどで販売されていますから、やろうと思えば誰でも盗めるんじゃないでしょうか。
これも電波を盗られないように遮蔽できるケースにキーを入れることで簡単に対策はできますが、自宅のキーケース代わりならまだしも、外出時も常にケースに入れておくというのは現実的ではないでしょう。

スマートキーも複製されるので

車両盗難はプロの仕事です。一般人がガラスを割ったり、合い鍵を作ってセルモーターの電源を直結する辺りまではイメージできたとしても、イモビライザーをコピーしたり、リモコンの電波を増幅することは想像しにくいかと思います。しかし、プロはそれくらいのことも、ガラスを割っていた頃と同様、簡単にこなしていきます。

素人には難しくなっただけで、本職にとって新しい技術は毎度越えてきた山なのです。

盗難手口は日々進化する

自動車ユーザーがセキュリティは誤作動するのが心配とか、コストのことを考えている間に、敵は二歩も三歩も先に進んでいます。ある朝、駐車場からクルマがなくなって「やられた!」と思ってからでは遅いのです。

車両盗難に関しては、やられそうな「予感」とか「兆候」というものはありません。ある日、急に来てやられます。これは脅しではありませんよ。盗まれた人がみんなそうなのですから。当然、警察に届けたところでクルマが戻ってくることはありません。バラバラにされて海外に行ってしまうでしょう。現に現行型のハイエースなどはイモビライザーが装備されても盗難されています。

盗難手口は日々進化する。

またYouTubeを検索すれば、車種ごとにドアの開け方やロック解除の仕方などが出てきます。これらの公表されている動画に関して「公開されたら、その手口でやられるから公開を止めろ!」と言いたくなるでしょうが、実際にはこれでもふた昔前の技術。真似しているのは三流のコソ泥ですから、どうせ上手く盗めないでしょう。

プロから守るのもプロの仕事

盗みのプロは既に次の、そのまた次の手口に移っています。新しい手口は誰も対策していないので盗みたい放題です。その手口がバレ始め、足が付きそうになったら別の手口に変えていく。まさにイタチごっこ。そして、そんなプロの盗み屋から守るのが、プロの守り屋である我々なのです。敵がこうやってくるなら、こちらはこう防ごう。そういった事を考えながら対策を練るのが私の仕事です。抜け道を次々と埋めていくような作業でしょうか。

プロから守るのもプロの仕事

次回は、カーセキュリティに携わり続けてきた中村が日々色々考えながら蓄積してきたノウハウや知識を、少しだけみなさんにお伝えしたいと思います。ご期待ください。